Event
エレン・フライス
「Disappearing」展
It refers to the loss of an old friend very recently, someone that was very important for me, for my relationship to life in general and to poetry and literature. He used to publish magazines that were different from everything else, his fields were more life & politics. He had a big influence on many people in France. He died at 77 years old. His name was Michel Butel.
The title also refers to the world itself, that is disappearing. I am writing these lines in the Black Forest (in Germany), surrounded by green mountains, an astonishing landscape, but 30 km from here there is Fessenheim, a giant power plant, very old, that should have been closed long ago, according to many people this zone can become like Tchernobyl anytime now.
I also live 80 km from a power plant. Last year it had some leaks.Even though I try to live in harmony with the world I always think of the past and our future that I can only see very dark.
In a way I disappeared myself from a certain world, from my previous life and from Paris.
Elein Fleiss
ごく最近訪れた旧友の喪失がこのタイトルには重ねられている。彼は私にとってとても大きな存在だった。私の人生に詩と文学を結びつけてくれたから。彼はかつて雑誌を出版していたが、それはどんな雑誌とも違っていた。彼がいた領域はより生活的で、政治的だった。フランスの人々にとっても大きな影響を与えてきた彼の人生は77歳で幕を閉じた。彼の名はミシェル・ビュテル。
タイトルは失われていくこの世界そのものを映した言葉でもある。眼の前には翠の山々が拡がり、驚くべき景色に囲まれながら、私は今ドイツのブラックフォレストでこの文章を書いている。ただ、30km圏内には老朽化されたフェッセンアイム原子力発電所がある。この場所が今すぐにでもチェルノブイリのようになってもおかしくないと人々は言う。ずっと昔に閉鎖するべきだったのだ。私が住んでいる村の80km圏内にも発電所がある。昨年いくつかの亀裂がそこで見つかった。どんなに私がこの世界との共生を試みようとも、常に私の頭に浮かぶのは過去、そしてとてつもなく暗い私たちの未来だ。
ある意味では、姿を消し去ったのは私自身でもある。パリからも、これまで辿ってきた道からも私はもういない。
エレン・フライス
英語から日本語に翻訳: 志村信裕
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Center for COSMIC WONDERでは、エレン・フライス 「Disappearing」展を開催いたします。
エレン・フライスは自身の生活や旅先の風情を撮影した写真や記録した言葉を空間や媒体の中に独自の感覚により構成します。私的(詩的)な対象に目を向けた記憶と感覚により収集されたものを編成、構成することでそれらが成立します。それは彼女の中で消化され静けさにうつり変った私的(詩的)なジャーナリズムの美の在りようを表現しています。彼女の活動の遍歴を辿ると、生前にミシェル・ビュテルの語った言葉が思い浮かびます。
「私は言論 / ジャーナリズムを考えてきました、今も考えていますが、不慣れであると思っています。そして年月を経てもなお、私はアートと同じレベルで、出版は何を示すことができるか考えています。私は雑誌がアートやフィルムと同じくらい作り手と読み手にとって、美しく、大切な作品として存在すると思っている」*
エレンは90年代から2000年初頭にかけて、独自の編集視点を持った雑誌『Purple』を創刊します。2003年から2007年の『THE PURPLE JORNAL』では、独創的な美意識を通したジャーナリズム雑誌を発表。現在、フランスの南西部トゥールーズに近い田舎町に暮らし、写真や文章による作家活動が注目されています。
今展では、写真展示に加え、エレン・フライスとCosmic Wonderによる“Autre Temps”を発表します。エレンが近年ライフワークとしている古着を収集する行為からアイデアが生まれ、それらを用いてCosmic Wonderの前田征紀と安田都乃が手作業を行い、展示販売いたします。
墨は松や木々などを燃やした煤である
それらは生命を焼失することで煤へと変わる
墨は常世の気配を表現することに適している
韓国ではお坊さんが着る僧衣は墨で染めたもの
収集した古着から焼失した気配を感じるための試み
前田征紀
*A conference at Salon de la Revue (periodical fair), 2007
皆さまのお越しを心よりお待ち申し上げております。
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エレン・フライス
1968年4月、フランスのブローニュ=ビヤンクール生まれ。彼女は10年前にパリから離れ、現在はサン・アントニン・ノーブル・ヴァル(フランス南西部)で暮らす。
1989年より展覧会を企画し、雑誌を出版し、8ミリ撮影された短編映画を幾つか監督し、多くの写真を撮り、幾つかのテキストを書いた。
彼女の写真はOne Star Press とPoetry of sex にて出版された。
日本、トリノとミラノにあるフランス文化研究所にて展覧会を開催、近年は、Happy Baby Gallery(スイス・クリシエ)とEtxe Nami(フランス・サン・ジャン・ド・リュズ)で展覧会を開催した。
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会期:
2018年10月16日(火)- 10月25日(木)
“Autre Temps” Performance:
2018年10月16日(火)16時 - 17時
*Autre Tempsのコレクションは当日17時より販売開始します
*全て1点ものにより数に限りがございます
会場:
東京都港区南青山5-18-10
午前11時 − 午後7時
*休館日: 10月15日(月)
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Elein Fleiss “Disappearing”
発案: 林央子(here and there 主宰)
制作: Elein Fleiss、COSMIC WONDER
協力: 志村信裕(現代美術作家)、Stephen Sprott
主催: COSMIC WONDER