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エレン・フライス
Le Batèl
昨年7月、友人のイギリス人のアーティスト、アンディ・ウィルキンソンと一緒に、私の住む村(フランス南西部のサン・アントナン・ノーブル・ヴァル)に、古着やアンティークのオブジェ、食器や本などを販売する店を開いた。アートのインスタレーションのように、オブジェや洋服と自分たちの作品を織り交ぜて展示するレイアウトを一緒にデザインした。
この新しいプロジェクトは、売ることよりも、買うことに重きを置いている。アンディと私は同じ精神を分かち合いながら、それぞれが独立して仕事をしている。私は美しいと思ったもの、目を惹くものは何でも買う。手吹きガラス、古い金属や木の道具、カップ、スカート、手袋、バッグ、革の財布、ウールのセーター、皿の山、男性用のコート、花瓶、、、夢中になって探している。美しいものを見つけるのはとても難しいことだ。スリフトショップやチャリティーショップなど、不要なものを譲ってくれるところへ行く。それらの店は、郊外や小さな町の工業地帯にあることが多い。商品は醜くて質の悪いものがほとんどで分別もされていない。服の棚やラック、トレイに積まれた果てしない服や皿の山、カップやグラスや本で埋め尽くされた棚、スカーフやジュエリーの入った籠など、あちこち見てまわる。何も見つけることができないと思う瞬間があったとしても、その中から宝物を見つけることができる。そして、時折信じられないような美しい陶器を目にして感動に包まれる。その一方、「これは自分のために取っておくべき?」というジレンマが生まれる。「もうこれ以上カップ(またはティーポット)の棚に置くスペースはないでしょう!」、「そう、あなたはコートをたくさん持っているので、これはお店のもの!」とか。でも、その思いがあまりにも強すぎるときはキープをして、自分のコレクションから別のものを出して売ろうと思っている。
この仕事を始めてから半年が経ち、ヨーロッパの陶磁器や20世紀に存在した様々なブランドについて多くを学んだ。私の好みは時間とともに変わり、ある色や模様に飽きると、突然新しいものに魅了される。不思議なものだ。できるだけ自分の感覚に従うようにし、考え込まないようにしている。考え過ぎてしまうと簡単に売れると思ったものを特別好きでもないのに買ってしまったり、間違った方向に進んでしまうことがあるのでそれは避けたい。自分が好きなもの、売れるかどうか疑わしいものでも買いたいと思う。そして、そんな私の好みに共感してくれる人がいることを知り驚いている。商売は出版と同じように、自分の心と感性で行えば、共有できるものなのだと知った。
*Le Batèlとは、私が住んでいる地域の原語であるオクシタン(フランス)語で「船」を意味する。
2023年3月
エレン・フライス
Photography by Elein Fleiss