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うつくしいカディの村

May 23, 2020 | Free Press 

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インド・コルカタの都市から車で6時間ほどの長い道のり。道中、椰子の実の果汁を飲んだり、ショッキングピンクのペーパーナプキンとともにロティーや土器茶碗に入ったチャイをいただきながらカディの村に辿り着いた。4月の西ベンガルはすでに灼熱の日差しにより歩くことも容易ではないが、ありがたいことに村の人たちがたくさんで出迎えてくれた。村の家はほとんどが木の構造に土を塗った土家のようなもので、そこに草葺き屋根がのっている。工房の火をおこすおくどさんも土間から土が生えたような作りで、そこで糸の精錬をしている。原初のような美しい光景が残っていることに嬉しくなり、私たちのカディがここで織られていることをとても愛おしく感じた。糸の精練から織までを村の人たちが分担で行っている。現在、糸紡ぎは昔のガンジーのチャルカから複式チャルカになっている。糸紡ぎや糸巻きは女性が行い、大きな幅広織機の機織りは男性の仕事になっている。ある織機は土間を掘り、高機を半地下に埋め込んだようなものが印象的だった。湿度が必要なのだ。昔はどこの村でもカディを作っていたのだろう。日本でも植物から繊維を取り出し自然の布を各地の農家で作っていたのはさほど遠い昔のことではない。織機の心地よい音が響く村はみんな楽しそうだ。村の家々を案内してくれたり、木によじ登りマンゴをとってくれたり、賑やかに話をしながら村の中を散歩した。

 

その日、カディの布などを藍染めしていた古い工場跡の美しい宿に泊まった。夜、庭を散歩していると、たくさんの無数の蛍が菩提樹の木々に鈴のように輝いていることに気がついた。その美しい光はこの旅の私たちへのギフトとなった。

 

Apr 1, 2020 前田征紀

 

今回の旅とカディを繋いでくれた江崎正代さん、そして、私たちのカディをブロックプリントまで仕上げてくれるコルカタのウシュマさんとモニカさん、カディ村のみなさまに感謝と愛をこめて。

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